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みるく。



「手塚、お前部活と生徒会のことばっかやっていないで、クラスのことも一寸はやれよ?

一応、学級委員長だろ?」

と、唐突に云ってきたのはクラスの担任。





十月の中旬、青春学園中等部の体育祭を間近に控え、皆忙しい日々。

生徒会は、其の後に控えている文化祭の準備をしていた。

何しろ文化祭は体育祭の二週間後。

生徒達も文化祭準備と併行して行わなければならないため、大変忙しいのだ。



だが、其れは手塚が一番理解しているところ。

生徒会長、男子テニス部部長と、只でさえ多忙の手塚に追い撃ちをかけるように、

なかば強引に引き受けさせられた役目。

根が真面目な所為か、どの仕事も完璧にこなそうとするのが難点である。





そして今回かせられた仕事はこうだ。

『体育祭で使うクラス旗の作製』

作製といってももう布も完成し、イラストも描かれ、後は塗るだけというところまで

仕上げられていた。



だが、誰もが其の色塗りを嫌がったので、担任が最後の頼みの綱≠ニ、手塚に

任せたのである。

嫌がる理由は、其の旗の大きさにあった。

ざっと見ても縦に1.5メートル、横に2.5メートルはあろうかという大きさである。

色塗りだけでも相当大変であろうことは、明らかだった。

否、色塗りが一番大変だといっても過言ではない。



其れを手塚は任されてしまったのである。

手塚は他の生徒より忙しい身であったが、其の手塚に任せるくらいだ、

本当にやる人が居なかったのかもであろう。

しかも最後の頼みの綱とあれば、余計断れないというもの。

仕方なくではあるが、引き受けることにしたのだった。









其の夜、手塚は色塗りに没頭していた。

「国光さん。御夕食出来たわよ?」

と一階からの母の呼びかけにもそこそこに答えるほど、色塗りに没頭していた。



が、突然コツンという音とともに窓硝子が震動した。

ふ、と其方に意識を向けると、またコツンという音とともに窓硝子に石がぶつかる。

はぁ、と溜息を吐いて立ち上がり、窓に近づくと硝子越しに庭を見下ろす。



予想通り、暗闇に人影。

いつものように闇と同化するような黒い着物に黒髪。

年の割には引き締まった体躯。

無精髭にヘラヘラとした笑みを顔に貼り付けた其の人。



手塚の悩みの種でもあり、想い人でもある越前南次郎だ。

悩みの種というのも、此の男の息子が…という結構泥沼な関係があるのだが、其れは省略することにする。





手塚は思案した。

―今日、此の侭あの人を家に上げるとして任された仕事は終わるのか?
否、其の前にあの人に邪魔されるか何かして終わらないに違いない。
かといって、上げなくても後で何をされるか解ったのもではないし……。

と考えていると、またしても石が投げつけられ、現実に引きも出される。



手塚は意を決し、窓を開けると開口一番こう云った。

「帰ってください。」

其の言葉に吃驚した様に目を見開くが、直にまたニヤニヤとした笑みに戻る。

「何だ、随分な歓迎じゃねぇか?」

笑いながら何処から持ってきたのか、梯子を窓に架け、問答無用で登っていく。

「帰ってください!!」

尚も云うが、無視して部屋に上がり込む南次郎。



此の場合、不法侵入罪に問われるのではないかというツッコミは無しの方向で。



部屋に強引に上がり込んできた南次郎が最初に目を留めたのは、やはりあの旗であった。

「此れ、何だ?」

旗を指して問う。

「……体育祭の時に使うクラス旗です。」

答えて、手塚は色塗りを続行しようと旗の前に座った。

「あー、そういやリョーマが云ってたような…。」

無精髭を撫でつつ云い、ドカリと手塚の横に腰を下ろす。

「…居座って良いとは云っていませんが?」

「別に良いじゃねぇか。減るもんじゃなし。」

「貴方の場合、減る気がするので。」

「減らねぇよ。」



会話をしながら着彩していた手塚の手が止まると会話も止まり、暫し思案するように旗を眺めながら顎に手を添える。

眉根を寄せ、困ったように思案する姿もふけ…いや、大人っぽい。

急に黙りこくった手塚を見て、旗と手塚を交互に見、思いついたようにポンと掌に拳を収める。 

「もしかして、白の発色がわりぃのか?」

南次郎が云った瞬間、手塚は南次郎を見、コクリと頷く。

「あーそりゃぁ、あれだ。牛乳で塗りゃぁ良んだよ。」

満面の笑みで爆弾発言。



瞬時に手塚は思った。

―…聞き間違いか?
牛乳とは、あの哺乳類に属する白と黒の色をした、あの牛の乳か?!
いや待て、もしかすると牛乳という名前の具材が存在するのかも…。
しかし、生まれて此の方、そんな名前の物なんて聞いた事が無いぞ?
よし。此処は此の人に聞いた方が早そうだ。(此の間約0.3秒)



「…あの、牛乳とは牛の乳の牛乳ですか?」

「そうだ。他にあるか?」

「……いえ、思い付きません。」

俯き加減に手塚が唸っている中、南次郎といえば、



―コイツ揶揄うの、ほんとに楽しい。うまい具合に本気にしたみたいだし、もう一寸黙ってるか。



「よし。国光!!ちょっくら牛乳もってこい。俺も手伝ってやるから!!」

俯いていた手塚が顔を上げ、有難う御座います。と立ち上がって牛乳を持ってくるべく台所へ向かう。

手塚が部屋から出て行くと同時に噴出し、腹を抱えて声を抑えながらも肩を震わせて笑う。

手塚がかえってくるまでにあ落ち着こうとヒイヒイいいながら目尻の涙を拭う。

其の頃、手塚はやはり眉根を寄せながらも、素直に(?)南次郎のいうことを信じ、牛乳を用意していた。





手塚が部屋に戻ると、笑い崩れている南次郎と遭遇した。

其の光景を見て、瞬時に悟ったのか、段々と手塚の顔は赤くなり、怒りに満ちた形相となっていく。

其れとは逆に、蒼白になっていく南次郎。

次の瞬間には、手塚家周辺半径100メートルにまで、手塚の怒声が聞こえたとか。







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此処まで南塚で笑ったのは久しぶりでした(笑)
南塚難しい…等と言いながら書いてくれて有難う
今度は是非絵のほうに挑戦してみてくれ<嘘です。御免なさい。
貴方の描いたパパに、毎日うっとりしている今日此の頃です。

有難う、雪。愛してるぜ(笑)


松方 雪様家頁 the selfish riNg finger

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